歴史番組のため日本大学理工学部精密機械工学科の粟飯原萌先生と日本大学生産工学部数理情報工学科の古市昌一先生及び 川上智先生(客員研究員)とで本年1月からFAiBS(Furuichi Aibara Battle Simulator)の上に新たに指揮統制(Command and Control)モデルを構築し,FAiBS C2を開発してきましたが,2023年3月14日(火)にFAiBS C2を用いて番組収録が古市研究室で行われました.放送日と再放送日は次のとおりです.精密機械工学科と数理情報工学科が得意とするAIとモデリング&シミュレーションの技術がどのように歴史の研究にも活かせるか,ご覧ください.
○再々放送日:2023年7月5日(水) 16:15-17:00
○再放送日:2023年5月8日(月)深夜 5月9日(火) 午前 02:46-03:31
○放送日:2023年4月26日(水曜日) 22:00-22:45
古市研究室では人間の意思決定と行動をコンピュータ上で再現するためのメカニズムとして人工知能の応用を研究しており,応用分野の一つとしてTV番組の制作に協力して歴史上起こった様々な戦いをコンピュータ上で再現しています.これまでに再現した戦いは関ヶ原の戦い,三方ヶ原の戦い,本能寺の変,中国大返し,美濃大返し,長篠の戦い,黒船来航等ですが,今回番組でテーマとして取り上げるのは戦国時代最強の武将と言われた武田信玄の,指揮統制能力の高さをシミュレーションにより再現して可視化することです.指揮統制の能力自体は人間の能力のため直接可視化することはできませんが,コンピュータ上に再現した仮想戦闘環境上で戦闘状況の変化を見せることによって,指揮統制能力の違いの可視化にチャレンジしました.
モデル化にあたっては,生産工学部内の歴史ファンの皆さんから指揮統制能力の高かった武将に関する図書や情報をたくさん提供していただいた他,歴史家の樋口隆晴先生との2回の討議と番組ディレクタの方からのアドバイスをベースに,FAiBS CSを粟飯原先生が約1ヶ月半の開発期間で(株)構造計画研究所のartisoc Cloud(マルチエージェントシミュレーションのための開発環境)上に開発しました.
番組の中では武田信玄が如何にして統制力を高めて最強の武将となったのかが紹介され,シミュレーションでは統制力を使番という役割におきかえてモデリングし,その有無によって戦いの結果がどのように変化するかを再現しました.また,現在の軍隊で重要であると言われるミッション・コマンド(リーダが作戦の大方針を決定し,現場は現場の指揮官にまかせる)が,使番を用いた本シミュレーションによってわかりやすく再現されている旨,番組中で紹介されました.
(c) NHK 番組中の1シーン
収録時の番組進行はNHKの近田雄一アナウンサーが行い,2020年に放送された「歴史探偵〜黒船来航」以来3年ぶりの研究室来訪でした.番組中では戦闘状況の中継を,指揮統制能力を中心に開発者3人と掛け合いながらお話しをすすめることができました.内容の詳細については,番組をご覧ください.