プロローグ
聖路加国際大学の木村理加博士(看護学)は,日本大学の古市昌一博士(工学)(ゲームのチカラで世界を救う,Serious Game Design Lab.)と(株)SQOOL(ゲームで世界を繋ぐ,The Gaming Company)の加藤賢治と共同で,臨床看護師のためのゲーム型学習用教材『仮称:キムラチャレンジ』の企画を2024年春から開始し,2025年4月から開発に着手することにしました.
①まず行ったのは,これまで木村理加博士が行ってきた「臨床看護師のためのe-ラーニング型学習用教材」とその効果についての勉強会.これにより現状の課題を皆で把握し,既存教材には以下に示す2つの問題点が判明.
この2つを得意とするのは,「ゲームの持つチカラ*」.教材はゲーム形式にするのがベストだと全員が確信してまとめたのが,『仮称:キムラチャレンジ』のペラ企画書です.
その後,この企画書に基づいて開発をすすめるべく検討を続け,残すは開発資金の獲得だという段階で2025年を迎え,クラウドファンディングでこれから多くの方からご支援をいただくべく準備を行い,現在に至ります.
*ゲームのチカラ (出典:古市昌一,シリアスゲーム: ゲームのもつチカラの活用法,作業療法ジャーナル 第54巻 (9), pp. 957-963 )
②『仮称:キムラチャレンジ』はゲーム型の学習用教材で,シリアスゲーム*というジャンルに属するゲームです.見た目(look)もプレイした時の感覚(feel)も,エンタテインメントを目的とした一般のゲームと同じです.しかし,知識が全くないと楽しくプレイすることができないため,そのために知識を獲得しよう,という内発的動機が生まれる点が一般と異なります.
*シリアスゲーム:世の中の課題解決を目的として開発したゲームのこと (出典:藤本徹,古市昌一他,シリアスゲーム,コロナ社,ISBN: 9784339013757)
③ 『仮称:キムラチャレンジ』のシチュエーションは病院,その中でも最も緊急かつ高度な医療を施すICU(集中治療室)に入院中の患者さんを看護すること.
ゲームのミッションは,人工呼吸器を装着している患者さんから,安全なタイミングで人工呼吸器を離脱するようアセスメントすること.失敗は許されない,患者さんの命に関わる,そのような状況の中で限られた時間内に離脱を成功するためには.....看護学校で学んだ知識だけではだめ,経験も必要ながら,限られた時間の中でドキドキ,そしてハラハラしながら,まず「呼吸仕事量」の増加をアセスメントする.そのためには,人工呼吸器のグラフィックモニターの確認....患者さんの各状態をアセスメントし,至短時間で総合的に判断,そして人工呼吸器の離脱!しかし,法律により離脱を行うことができるのは医師....!...
④ 限られた時間の中でドキドキ,そしてハラハラ,至短時間で正しい判断と意思決定,このICUでのこの状況は脱出ゲームや爆弾解除ゲームをプレイする時も同じだ,木村理加博士はそのように考え,『仮称:キムラチャレンジ』の開発に,自らチャレンジすることを決めました.
⑤ 今回木村理加博士がチャレンジする『仮称:キムラチャレンジ』の第1版シナリオは,人工呼吸器の離脱.木村理加博士は以前e-ラーニング型の教材を開発して実験を行って一定の効果が得られたものの,もっと楽しく継続的に学ぶ方法を求めて,このチャレンジを始めました.
❶ 『仮称:キムラチャレンジ』は,臨床看護師のための学習用教材なので,看護師の皆さんにとっては次のようなメリットが得られます
❷ 『仮称:キムラチャレンジ』は,看護に興味を持った高校生の皆さんにとっては次のようなメリットが得られます
❸ 『仮称:キムラチャレンジ』は,一般の人にはメリットがないかというと,さにあらず.いつか入院するかもしれない皆さんにとっても次のようなメリットが得られます
エピローグ
『仮称:キムラチャレンジ』があれば,臨床看護師の皆さんの人工呼吸器の離脱アセスメント能力を高めることができ,医療・看護全体のQOL(Quality of Life)向上に寄与できると考えています.
皆さんのご協力により,『仮称:キムラチャレンジ』を2025年度中に開発し,病院で評価実験を実施して結果を論文として発表し,普及することが可能となります.
『仮称:キムラチャレンジ』は,TEL(Technology Enhanced Learning)方式をベースとした臨床看護師のためのゲーム型学習用教材の仮称で,シリアスゲームというジャンルのゲームとして全国の臨床看護師および看護学校や大学等への普及を目指しています.